「まあどうしましょう、あたしたち、もうだめね。」

と、いいました。

「しッ、だまってグレーテル」

と、ヘンゼルはいいました。

「おさわぎでない、だいじょうぶ、ぼく、きっとよくやってみせるから。」

こう妹をなだめておいて、やがて、親たちがねしずまると、ヘンゼルはそろそろ起きだして、うわぎをかぶりました。そして、おもての戸の下だけあけて、こっそりそとへ出ました。

ちょうどお月さまが、ひるのようにあかるく照っていて、うちの前にしいてある白い小砂利が、それこそ銀貨のように、きらきらしていました。
ヘンゼルは、かがんで、その砂利を、うわぎのかくしいっぱい、つまるだけつめました。

それから、そっとまた、もどって行って、グレーテルに、

「いいから安心して、ゆっくりおやすみ。神さまがついていてくださるよ。」

と、いいきかせて、自分もまた、床にもぐりこみました。

夜があけると、まだお日さまのあがらないうちから、もうさっそく、おかみさんは起きて来て、ふたりをおこしました。

「さあ、おきないか、のらくらものだよ。おきて森へ行って、たきぎをひろってくるのだよ。」

こういって、おかみさんは、こどもたちめいめいに、ひとかけずつパンをわたして、

「さあ、これがおひるだよ。おひるにならないうち、たべてしまうのではないぞ。もうあとはなんにももらえないからよ。」

と、いいました。